Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

    “うさぎ・うさぎvv”
 


クリスマスに続き、ハロウィンも随分と根付いて来た日本へ、
次に 流行なり上陸なりという格好で、
“キそう”なお祭り騒ぎはといやあ、

 「そりゃあもう“イースター”しかなかろうよ♪」

別段、ミッション系の幼稚園だのへ通っていた訳でもないし、
金髪に色白、双眸は金茶色という、いかにもな風貌のまんま、
実は血縁に西欧人が多数おり、キリスト教徒だってわけでもない。
大好きなのはイカの塩辛ですという、
生え抜きで生粋の日本人の坊やじゃあるが。

 「やっぱ そういうカッコが似合うよな、お前。」

フェイクファーのウサ耳がひょこりと立ってるカチューシャに、
扮装自体は『不思議の国のアリス』のウサギか、
チェックがらのベストと それから、
ポロでもするのかという膝丈のニッカポッカというおズボン、
アイロンの利いた白いシャツという、
微妙に えげれすのフォーマルっぽい雰囲気の
いで立ちで決めておいでの子悪魔様。
だったのでと、思ったまんまを素直に口にした途端、

 「とうっ。」
 「いってぇ〜っ☆」

黒と白の切り替えもかわいらしい革靴の先で
えいやと蹴られている葉柱だったのは、
果たして進歩がないだけか、それとももはやお約束なのか。

 「じゃあなくて。」

あ、はいはい。
判ったからそんなに目を座らせないでください、妖一くん。

 「別に可愛いを押し出してんじゃねぇやい。」

そっちの線では むしろセナが頑張っとるわと、
ズボンのお尻に尻尾のつもりかボンボンまでくっつけている話を聞いて、
まあ、座らないならいいけれどと、
忠告してやったばかりなのをちらりと洩らしてから。

 「ガッコは休みだが、
  保育園は春休みも関係ねぇってノリで、
  チビどもが毎日集まってるからな。」

そうそう。
共働きだのシングルマザーやファザーだのという事情から、
園へ預けられている子供たちの場合は、
どうかすりゃあ 託児所みたいなもんで、
春休みどころか夏休みも関係なかったりするほどの毎日、
親元離れてという格好で、預けられておいでなので。
ガッコが短縮授業だった日なぞの帰り道、
向こうは公園までのお散歩などでお出掛けなのとすれ違うと、
小さいお兄さんたちとして、
遊んであげることも たまにはある、二人だったりもしたんだそうで。

 『ねえねえヒル魔くん、これ何ぁんだvv』

可愛らしいウサ耳のついたカチューシャを
“これ知ってる?”という順番で見せたセナくんに、
何を言いたいかまでザクッと拾えた身が災いし、
それから連なるイースターまで、
詳細含めてしゃきしゃきと答えてしまったところ、

 『うわぁ、すごい凄いvv』

セナじゃあ そこまで上手に説明できないもんね。
あ、あ、そうだ。
だったらヒル魔くんがお芝居の読む人やってよ、と。

 『…はぁあ?』

なんですて それと、怪訝そうに聞き返したのも後の祭り。
それはいい逸材がいたもんだと、
主催者の一人だったらしい桜庭のお兄さんからも
諸手を上げての大歓迎されるわ、
可愛らしい晴れ姿をぜひディスクに残してと頼まれたらしい、
こっちじゃ(こっち?)お久し振りの、
どっかの歯医者が喜々として途中参加し、
衣装や段取りに てこ入れするわで。
これは逃げられそうにはないかと諦めたその途端、
何でまた この古いイベントが日本では影が薄いかを、
何とかせんとという勢いになってしまっている
ウサギの姿の坊ちゃんだったりし。(「…くぉうら」)怖

 「あっちもバリバリにキリスト教のイベントの
  ハロウィンがじわじわ来てるのに、
  こっちが何で広まらないかといや、
  絶賛春休み中の行事だからだと思うんだな。」

日本では“復活祭”と翻訳されているのは、
イエス・キリストが十字架の上で亡くなって、だが3日後に復活したことが、
生命の始まりを祝う祭りというこのイベントの、起源となっているからで。
うさぎは多産、玉子はそのまま生命の象徴なので、
“イースターといえば”のモチーフにされている……のだが。
ワーナーとかほにゃららとか、
アメリカから来たいろいろなアニメで何となく、
春になったらウサギが卵を配って回る展開を見てただろうに、

 「さすが、進化論を受け入れてねぇキリスト教じゃあ、
  玉子からウサギがかえっても
  構やしねぇんだなって思ったもんだが。」

 「…おいおい。」

そういう展開もなくはなかった
ちょっぴり大人のバックスバニー…は さておき。(おいおい・笑)
子供番組にまで出て来た代物だのに、
詳細な意味までは日本で浸透していないのも。
キリスト教の行事だからというより、
そういうのが何とか判るだろ年頃になった子らは、
宿題がない春休みを堪能しているからで。

 「まあ、それを言ったらハロウィンも似たようなもんだけど。」

聖なる日の前の晩、
地獄の蓋も開いてしまう…とかどうとかいう理屈は、
やっと最近になってメジャーになって来た後づけのようなもの。
カボチャと仮装だけが、まずは先行したんですものね。
そこのところを公正にと口にした葉柱のお兄さん、
ついでにと畳み掛けたのが、

 「あと、イースターの方は年によって日にちが違うしな。」
 「う…。」

これも年によって微妙に変わる春分の日が起点になっているその上、
そこからすぐの満月の晩から数えた、最初の日曜…というややこしさなので、
今年は3月31日だが、来年は4月の末じゃなかったか?
しかもしかも、キリスト教には暦が二つあり、
グレゴリオ暦だと3月31日だが、ユリウス暦だと5月5日だそうで。

 「まあ、日本人だって、
  クリスマスパーティーには集まっても
  仏様の誕生日を甘茶で祝う
  “花祭り”は知らない人もいるくらいだし。」

それに、と。
恥ずかしいよぉに追いつかれたくないからか、
やたら正当化したがるウサギのカッコ。
まんざらでもないのになとの愛でるような視線で撫でてやってから、

 「年によって違うと言えばの究極。
  今年の桜なんぞは、
  今日明日にも満開を過ぎて
  どうかすると散り始めっちまうからな。」

イースターとやらの衣装合わせをしていたらしい子悪魔さんを、
そうとも知らずに訪のうた、フリル・ド・リザードの主将にして、総長さん。
着替えるなら急げよと、
珍しくも彼の側から坊やを急かしたのは何故なのか、
そうと言いつつ、ひょいと前へ出して見せた、
ちょっとごっついランチジャーが物語っていて。

 「…あ♪」
 「例の穴場もな、今年はずんと早いんだよ、咲いたのが。」

誰も知らない、そりゃあ見事な桜の園。
ゆっくりと独占状態で見物できる正に穴場のそこへは、
あんまり他の顔触れは連れてかないルイだからね。
きっとこっそり迎えに来たんだろうと、
そこはピピンと来た子悪魔ウサギさん、

 「待ってろ、15秒で着替えるからっ!」
 「おう。」

いやいや、結構きっちりした服だったぞそれは無理なんでないかいと。
判ったと応じた端から、あれれぇ?と無理矛盾に気がついて、
ああこれは妖一くんなりの子供らしさだなと、
そんな格好でも苦笑が絶えなかった葉柱のお兄さんだったそうで。

 確かにこの春の桜はせっかちですが、
 そこまで駆け足にならずとも大丈夫ですよと

サツキの茂みに少ぉし萌え出ていた若葉が
明るく微笑った、弥生の末のお昼前でした。





     〜Fine〜  13.03.29.


  *こっちのお部屋では浚ってたかな?のイースターを
   ちょいとネタにしてみましたです。
   ウサギの扮装というと、ついつい
   『不思議の国のアリス』のウサギさんを想起してしまうのですが、
   そのっくらいに、
   イースターって日本人にはまだまだ馴染みが薄いですよね。
   妖一くんが持ち出した“春休みだから…”っていうのも、
   アメリカの春休みも結構なものなので理由になるかどうかで、
   こちらが浸透するか否かは、
   ひとえに ネズミーとUSJにかかっているぞ?(こらこら)

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